受託開発と自社開発の違いは?メリット・デメリットと選び方を徹底解説
受託開発と自社開発の違いは?メリット・デメリットと選び方を徹底解説
システム開発やAI開発を進めるうえで、「自社で開発すべきか、それとも外部に委託すべきか」は、多くの企業が直面する重要なテーマです。どちらを選択するかによって、開発スピード・コスト・ノウハウの蓄積・リスクの取り方が大きく変わります。本記事では、受託開発と自社開発の違いを整理し、それぞれのメリット・デメリット、向いているケース、開発体制の選び方までを分かりやすく解説します。自社の状況に合った最適な開発体制を検討する際の参考にしてください。
受託開発と自社開発の違いとは?
受託開発とは、外部の開発会社にシステムやAIの開発を依頼し、要件に応じた成果物の提供を受ける開発方式です。一方、自社開発とは、社内のエンジニアや開発チームが企画・設計・実装・運用までを自ら担う方式です。受託開発はスピードと専門性に強みがあり、自社開発はノウハウの蓄積や柔軟な改善に優れています。プロジェクトの目的・期限・リソース状況に応じて、最適な組み合わせを選ぶことが重要です。
受託開発とは
受託開発とは、自社のシステムやプロダクト開発を外部の開発会社に委託し、一定期間・一定範囲の業務を任せる開発方式です。要件定義に基づいて設計・実装・テスト・納品を行うため、結果としてのアウトプットが明確になりやすく、短期間で高品質な成果を得やすいという特徴があります。社内に専門人材が不足している場合や、新規領域にスピーディに取り組みたい場合に特に有効な選択肢です。
自社開発とは
自社開発とは、社内のエンジニアや開発チームが中心となって、自社サービスや業務システムを独自に設計・開発・運用する方式です。業務理解や顧客理解を反映した細かな改善がしやすく、開発プロセスや技術がそのまま自社の資産として蓄積されます。一方で、人材採用や育成、開発環境の整備など、初期段階でのコストや時間が大きくなる傾向があります。中長期的な開発戦略を描きたい企業に向いた体制です。
受託開発のメリット
受託開発は、社外のリソースと専門知識を活用できる点で多くの企業から選ばれています。ここでは、実務上よく挙げられる3つのメリットを整理します。
開発リソースを確保しやすい
自社に十分なエンジニアやプロジェクトマネージャーがいない場合でも、受託開発であれば必要なスキルを持つチームをまとめて確保できます。採用や教育にかける時間やコストを抑えつつ、すぐに開発プロジェクトを立ち上げられるため、リソース不足に悩む企業にとって大きなメリットとなります。
専門性の高い技術者に任せられる
AI、クラウド、セキュリティ、データ基盤など、専門性の高い領域は社内で完結させることが難しい場合があります。受託開発では、その分野に強みを持つ技術者やチームに任せることができるため、最新技術を取り入れた設計や安定した品質の実装が期待できます。複数のプロジェクト実績を持つベンダーであれば、実践的なノウハウも合わせて提供してくれます。
予算計画が立てやすい
受託開発では、要件定義〜テスト・納品までの範囲を明確にした上で見積もりが提示されるため、プロジェクト単位での予算計画が立てやすくなります。工数や費用の内訳が整理されていれば、どの部分にコストがかかるのかを把握しやすく、社内稟議や経営層への説明もスムーズに行えます。
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受託開発のデメリット
受託開発には多くの利点がある一方で、プロジェクトを成功させるために注意すべきポイントも存在します。ここでは、代表的な3つのデメリットを紹介します。
コミュニケーションコストが発生
社内と外部ベンダーの間で情報をやり取りするため、要件や優先度、スケジュールなどを正確に伝えるコミュニケーションコストが発生します。認識のズレを防ぐためには、定例ミーティングやドキュメント共有、議事録の活用など、適切なコミュニケーション設計が欠かせません。
要件定義に労力を要する
受託開発では、最初の要件定義が曖昧なままだと、後から仕様変更や追加開発が頻発し、コスト・スケジュールの両面でブレが生じやすくなります。業務フローや画面仕様、連携先システムなどを事前に整理し、言語化しておく必要があり、ここに一定の工数がかかる点はデメリットでもあります。
スケジュール・品質管理の難しさ
開発会社が複数の案件を抱えている場合や、要件変更が重なった場合、当初想定していたスケジュールや品質レベルを維持するのが難しくなるケースもあります。契約前に、進捗報告の頻度やレビュー体制、品質基準などを十分にすり合わせておくことが重要です。
自社開発のメリット
自社開発は、短期的な負担は大きいものの、中長期的な視点では大きなリターンを生みやすい開発体制です。ここでは、自社開発の代表的なメリットを3つに絞って解説します。
自社ノウハウを蓄積できる
開発プロセスや設計思想、トラブルシューティングの知見がすべて社内に蓄積されます。プロジェクトを重ねるほどに開発スピードや品質が向上し、長期的には大きな競争優位につながります。特にコア事業に関わるシステムでは、自社ノウハウの蓄積は大きな資産となります。
開発方針や優先度を柔軟に変更可能
社内チームで開発を行うため、事業戦略の変更やユーザーの反応に応じて、機能の優先順位や開発ロードマップを柔軟に見直すことができます。外部との契約に縛られにくく、細かな改善を継続的に行える点は、自社開発ならではの強みです。
社内体制の強化につながる
自社で開発を進めることで、エンジニア組織やプロダクトマネジメントの体制が育ちます。結果として、ITリテラシーの向上やDX推進が進み、企業全体の競争力強化につながります。長期的に技術力を軸にした事業展開を行いたい場合、自社開発は有力な選択肢です。
自社開発のデメリット
一方で、自社開発にはリソースやスキル面での課題も多く、準備不足の状態で始めると負担が大きくなってしまいます。ここでは代表的なデメリットを3つ取り上げます。
開発リソースの確保が課題になる
優秀なエンジニア人材の採用競争は激しく、必要なスキルを持つ人材を迅速に集めることは簡単ではありません。採用活動や社内調整に時間がかかるため、短期的な開発スピードを求めるプロジェクトではハードルとなる場合があります。
専門知識や技術者の育成コストがかかる
AIやクラウド、セキュリティなどの先端領域では、継続的な学習とアップデートが不可欠です。社内でこれらをキャッチアップし続けるには、教育への投資やナレッジ共有の仕組みづくりが必要であり、短期的にはコスト増加につながります。
開発スピードが遅くなる可能性もある
経験の浅いチームでゼロから開発を進める場合、調査や検証に時間がかかり、結果として市場投入までのスピードが遅くなることがあります。競合他社とのタイミングを意識するプロジェクトでは、この点も慎重に検討する必要があります。
受託開発・自社開発の選び方
受託開発と自社開発にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、「どちらが正解」というものではありません。ここでは、体制選択の判断基準となる3つの観点を整理します。
プロジェクト規模や目的で判断
短期間で成果を求めるPoCや限定的な機能改善であれば受託開発が向いており、中長期的なプロダクト開発や技術基盤の構築を目指す場合は自社開発が適しています。プロジェクトの規模と目的を整理し、それに合った体制を選びましょう。
社内リソースの有無で判断
社内に十分な開発リソースやプロジェクト管理体制がある場合は自社開発に比重を置くことができます。一方、エンジニア不足やマネジメントリソース不足がある場合は、受託開発やハイブリッド型を前提に考えたほうが現実的です。
予算とスケジュールから判断
短期的な予算やリリース時期が厳密に決まっている場合、受託開発のほうが計画を立てやすいケースが多いです。一方、長期的な観点でトータルコストを抑えたい場合は、自社開発を進めながら一部を受託で補完するハイブリッド型も有効です。予算とスケジュールの制約を整理し、現実的な選択を行いましょう。
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ALTAM EASEの受託開発事例について
ALTAM EASEでは、AIチャットボット、RAG検索システム、外観検査AI、業務自動化ツールなど、多様な領域で受託開発プロジェクトを支援してきました。要件定義から設計・開発・運用までを一気通貫でサポートしつつ、自社開発やハイブリッド型への移行も見据えた提案が可能です。具体的な導入イメージは、事例ページからご覧いただけます。
開発体制の決定から完成までの流れ
開発体制を選んだあとは、プロジェクト全体の流れを整理しておくことが重要です。ここでは、開発体制に関わらず共通する一般的な進行ステップを5つに分けて紹介します。
開発方針の決定
事業戦略やDX方針を踏まえ、プロジェクトのゴールやスコープ、受託/自社/ハイブリッドのどの体制で進めるかを決定します。関係部門と合意形成を行い、期待値を揃えることが重要です。
要件定義・設計
業務フローや画面、インターフェース、非機能要件などを整理し、要件定義書や設計書に落とし込みます。この段階の精度が、開発のスムーズさと最終的な品質を大きく左右します。
開発開始と進捗管理
決定した体制と要件に基づき、実装フェーズに入ります。タスク管理ツールや定例ミーティングを活用し、進捗・課題・変更点をきちんと共有しながら開発を進めます。
テスト・品質確認
単体テスト、結合テスト、総合テスト、ユーザーテストなどを通じて、仕様どおりに動作するか、実業務に適合しているかを確認します。AIを含む場合は、精度検証や例外ケースの確認も重要です。
システム完成・納品
テストをクリアしたら、本番環境へのリリース・納品を行います。受託開発の場合は保守契約や運用サポートの内容を確認し、自社開発の場合は運用チームや改善サイクルを整備することが重要です。
受託開発・自社開発が向いているケース
ここまでの内容を踏まえて、「結局うちの場合はどの体制が向いているのか?」と感じている方も多いはずです。以下に、受託開発が向いている企業・自社開発が向いている企業の特徴を整理しました。
受託開発が向いている企業の特徴
短期間で成果を出したい、社内に十分な技術者がいない、新規領域にまずは小さくトライしたい、といったニーズを持つ企業には受託開発が向いています。また、プロジェクト単位で予算管理をしたい場合や、経営判断として採用・育成に大きな投資を行いにくいフェーズの企業にとっても、外部パートナーの活用は現実的でリスクの低い選択肢となります。
自社開発が向いている企業の特徴
プロダクトやシステムを事業の中核に据え、中長期的な競争優位を技術力で築いていきたい企業には自社開発が適しています。すでにエンジニア組織があり、一定の開発基盤とマネジメント体制が整っている場合や、DX推進を社内文化として根付かせたい企業では、内製化を進めることで組織全体の底上げにつながります。
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開発会社選び・自社体制構築のポイント
開発体制を選ぶ際には、「誰と組むか」と同時に「社内側をどう整えるか」も重要です。ここでは、開発会社選びと自社体制構築のポイントを3つの観点で整理します。
開発実績・得意分野の確認
開発会社ごとに、得意とする技術領域や業界知識は異なります。AIが得意なのか、業務システムが得意なのか、特定業界に深い知見があるのかなど、自社の課題に近い実績を持っているかどうかを必ず確認しましょう。
見積もり・予算管理の透明性
「一式」ではなく、要件定義・設計・開発・テスト・運用といった工程ごとの工数と費用が明示されているかが重要です。コスト構造が見えることで、予算調整や優先順位付けが行いやすくなり、後からのトラブルも減らせます。
契約形態・保守体制・社内運用体制の確認
準委任契約か請負契約か、どこまでが保守対象か、障害対応や機能追加の扱いはどうなるのかといった契約・保守条件は事前に確認が必要です。また、社内側でもプロダクトオーナーや担当窓口、運用チームなどの体制を整えておくことで、プロジェクトの成功率が高まります。
よくある質問(FAQ)
Q1:受託開発と自社開発はどちらが安く済む?
短期的には受託開発のほうがコストを抑えやすいケースが多いですが、長期的な運用や技術蓄積を考えると自社開発が有利になる場合もあります。プロジェクトの期間と目的を踏まえ、トータルコストで検討することが重要です。
Q2:開発期間の目安は?
小規模なPoCであれば1〜3ヶ月程度、中規模システムで6ヶ月前後、大規模プロダクト開発では1年以上かかることもあります。体制やスコープによって大きく変動するため、早い段階で開発会社とスケジュール感を共有しておきましょう。
Q3:部分的に受託開発、自社開発を併用することは可能?
はい、可能です。基盤部分や新規機能は受託開発、運用や一部機能改善は自社開発といった形で役割分担することで、スピードと内製化のバランスを取る企業も増えています。
まとめ|自社に最適な開発体制を見極めよう
受託開発と自社開発には、それぞれはっきりとしたメリット・デメリットがあります。短期的なスピードや専門性を重視するなら受託開発、長期的な技術資産の構築や社内体制の強化を重視するなら自社開発が有力です。また、両者を組み合わせたハイブリッド型開発は、初期のスピードと将来の内製化を両立できる現実的な選択肢として注目されています。
重要なのは、「どの体制が一般的に良いか」ではなく、「自社の目的・リソース・予算・スケジュールを踏まえてどの体制が最適か」を見極めることです。本記事で紹介した判断軸や向いているケース、開発会社選びのポイントを参考にしながら、自社にとって無理のない開発体制を設計していきましょう。必要に応じて、外部パートナーとともに体制設計の段階から相談することで、リスクの少ない一歩を踏み出すことができます。
お気軽にご相談ください。

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