
ロス関数とは何か?〜LLMやAIの“賢さ”を決める見えない主役〜
ロス関数ってなんだ?
こんにちは。Altam Easeの本田直輝です。
今回はロス関数について解説します。
ところで、AIやLLM(大規模言語モデル)において「ロス関数(loss function)」は、ちょっと地味な存在ですが、モデルの“賢さ”や“精度”を裏で操る超重要な存在です。
でも実際にはこう思う方も多いはず。
「ロス関数って結局何を計算してるの?」
「なぜ“ロス”が少ないと賢くなるの?」
「LLMの推論と何が関係あるの?」
本記事では、そんな疑問を解消しながら、「ロス関数」の意味と役割、LLMとの関係をやさしく解説します。
ロス関数の正体:間違いを数値化する“モノサシ”
ロス関数とは、一言でいえば:
モデルの予測と正解データのズレを数値化する関数
です。たとえば、
「パリはフランスの____です」という入力に対して、
-
正解:「首都」
-
予測:「都市」
だったときに、その「外し具合」を数値化してくれるのがロス関数です。
この“ズレの度合い”を「ロス(loss)」と呼び、モデルはこのロスを最小化するように学習していきます。
学習と推論、ロス関数の違いと関係
フェーズ | 目的 | ロス関数の役割 |
---|---|---|
学習 | モデルの精度を上げる | ロスを最小化して重みを調整 |
推論 | 学習済モデルで予測を行う | ロス関数は使われない |
つまり、ロス関数は「学習中にだけ使われる指導役」のような存在です。ただし、学習でロスを減らすことによって、最終的に推論が賢くなるわけなので、「推論を司る根本の司令塔」とも言えます。
よく使われるロス関数(計算式つき)
1. クロスエントロピー(Cross Entropy Loss)
用途:LLMや分類タスク
特徴:正解ラベルの確率を高めたいときに使う
-
yi:正解ラベル(ワンホット形式)
-
pi:モデルが出力した確率分布(Softmax後)
✔️ 正解に近い予測ならロスは小さく、
✔️ 外した予測ほどロスが大きくなる。
2. 平均二乗誤差(MSE:Mean Squared Error)
用途:回帰タスク(連続値の予測など)
特徴:誤差の大きさを重く評価する
-
yi:正解値
-
y^i:予測値
✔️ 数値のズレが大きいほど、ロスが一気に跳ね上がる。
3. KLダイバージェンス(Kullback-Leibler Divergence)
用途:確率分布同士の比較(教師モデル vs 学習モデルなど)
特徴:予測分布全体の“形”を重視
LLMにおけるロスの計算イメージ
たとえば、次のような例を考えましょう。
入力:今日はいい____。
正解:天気
予測確率:天気 0.6、電車 0.2、気分 0.2
このときのロス(クロスエントロピー)は:
Loss=−log(0.6)≒0.51
→ モデルはそれなりに当ててるけど、まだ完璧じゃないという評価になります。
推論とロス関数の“見えないつながり”
推論時にはロス関数は使われませんが、
モデルは学習でロスを最小にするように訓練されているため、
結果として、ロスが小さくなるような“それっぽい出力”を推論で返すようになるのです。
つまり、ロス関数は「推論結果を直接決める」わけではないけど、
その“裏側の人格形成”にあたる、モデルの価値観を育てる存在なのです。
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
ロス関数とは? | 予測と正解のズレを数値化する関数 |
なぜ重要? | モデルが“正解に近づく”ための方向を教える |
LLMとの関係 | 学習でロスを減らすことで、推論精度が上がる |
よく使う種類 | クロスエントロピー(LLM系)、MSE(回帰)、KLダイバージェンス(分布比較) |
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